巨大ロボットアニメというジャンルは、1963年に放映された『鉄人28号』より始まる。その後1972年から放映された『マジンガーZ』は、主役ロボットを玩具化した「超合金」が玩具史上空前の大ヒットとなり、一大旋風を起こした。 
 その追い風に乗って、70年代後半期には続々とロボットアニメが登場した。特に現代のファンの間でも評価が高いのが、『超電磁ロボ コン・バトラーV』をはじめとする長浜忠夫監督作品や『無敵超人ザンボット3』をはじめとする富野由悠季(当時:喜幸)監督作品だ。しかし、これらの作品群は『マジンガーZ』に匹敵するヒットとはならず、ロボットアニメのブームは下火を迎えたかと思われた。

 第二のブームの火付け役となったのが、1979年に放映された富野監督の代表作『機動戦士ガンダム』だった。作品中に登場するロボット=モビルスーツのプラモデル、通称「ガンプラ」の大ヒットとあいまって伝説的な大ブレイク作となり、その後も続編作品が発表されるたびにヒットを続けることになる。
 当時の『ガンダム』のブレイクにより、時代は再び新たなロボットアニメを渇望するようになった。そんな時代性に応えるように東京ムービーが製作したのが、往年の元祖巨大ロボットアニメをリメイクした『太陽の使者 鉄人28号』(1980年より放映)と、さらに原作者を同じくする『六神合体ゴッドマーズ』(1981年より放映)の二作品だった。ともに漫画界のヒットメーカー横山光輝の原作をアニメ化した作品だが、両作品の原作へのアプローチの仕方は多少異なる。

『太陽の使者 鉄人28号』は、「80年代から見た近未来」の世界で、平和のために開発された巨大ロボット「鉄人28号」が活躍する物語。主人公の金田正太郎など主要登場人物は原作と共通しているが、ストーリーや敵キャラは必ずしも同一ではない(ただし、ブラックオックスやロビーといった一部の人気敵キャラは登場している。ブラックオックスが最初は敵として鉄人と戦いながら、後に頼もしい味方になるという展開も同じ)。表向きは明るい「勧善懲悪もの」だが各話に深遠な「社会問題」がテーマとして組み込まれている、というのも原作に近い。大人が観ても十分に考える楽しみを与えてくれる作品だ。


『六神合体ゴッドマーズ』は、「80年代から見た近未来」の地球を異星人が襲い、主人公の明神タケルが超能力と巨大ロボットを駆使して侵略から地球を守る物語。原作ではガイヤー以外は敵だった六神体を、アニメでは味方にして6体合体させるという思い切った変更がされているが、これは当時流行した多数合体ロボットを企画に取り入れることで時代性に応えた結果だ。また70年代後半期のアニメから始まり現在までのアニメには必須ともいえる、大河ドラマ風連続ストーリー形式が採り入れられており、現代のアニメにも少なからず影響を与えたドラマ性を楽しむことができる作品だ。
 80年代当時のアニメは『ガンダム』に象徴されるように、子供から若者までが共感できるドラマ性を前面に押し出したスタイルが主流になりつつあった。『ゴッドマーズ』もまた、そのトレンドに外れず、子供だけではない対象を意識したストーリー構成やキャラデザインを採っている。また、話が進むたびに少しずつ状況が変化していく「大河ドラマ」仕立てになっていた。

 それに対し『鉄人28号』は、原作の構成を踏襲した、特撮ヒーロー物のような「1話完結型物語」を基本としたストーリーで。ストレスなく、1話ごと容易に物語の世界に入っていける作品を意識している。
『鉄人28号』の主人公・正太郎は裏表のない性格の明るく真面目な少年。幼くして両親と死別している上に、鉄人の操縦者という重大な責務を背負いながらも朗らかさを失わない、誰もが共感できる愛すべきキャラクターだ。インターポールのメンバーで、10歳にして自動車の運転ができ(警察からライセンスを特別許可されたという設定)、拳銃(本作では麻酔銃)を持つ、といった少年の憧れを原作同様に具現化した要素が盛り込まれている。

『ゴッドマーズ』の主人公タケルは、地球で育った異星人という設定。しかも超能力が使えてゴッドマーズを操縦できる超人なのだ。地球を守るクラッシャー隊の一員となり、自分が育った地球を生まれた星よりも愛しているが、自分が死ぬと地球を滅ぼす爆弾が作動するという、幼くして両親を亡くした正太郎と比べてもかなり深刻な境遇にあるキャラクターだ。それゆえに孤独であり、思い悩み、悲しい宿命に耐えなければならない美少年戦士タケルの姿は、女性ファンを中心に人気を集めたのだ。
 両作品に共通するのは「平和に正常発展して豊かな近未来となるはずの地球」が、何者かの悪意によって危機にさらされるという物語だ。危機をもたらすのは、前半期の『鉄人』が「豊かな世界を喰いものにしようとする悪人」で(後半期のストーリーには宇宙からの外敵も登場する)、一方『ゴッドマーズ』は「地球の発展を恐れて滅ぼそうとする異星人の支配者」だ。

『鉄人28号』の各話は、こうした悪人たちに正義の心を持つ少年・金田正太郎が立ち向かい成敗するという「勧善懲悪」物語だが、各話に巧みに組み込まれたテーマのほとんどは現実的な「社会問題」なのだ。軍事目的の兵器としてロボットを売買する「死の商人」や「自然破壊」、「科学の横暴」「動物愛護」といった、21世紀の現代社会でも通用するテーマを含み、今見ても遜色のないストーリーになっている。

『ゴッドマーズ』の前半期の各話は、異星の支配者が地球を滅ぼすべく送りこんだ戦士を、地球を守る主人公・明神タケルが迎撃する「地球防衛戦記」だ(中盤で大ボスが変わると「宇宙戦記」へ変わる)。放映当時人気を集めたのは、登場人物の秘密が明らかになっていく過程や人間関係の推移、それによって変化していく人間の感情の機微を描いた「人間ドラマ」だ。現在の韓流ドラマを彷彿させるウェットな展開を、韓流ドラマが生まれるはるか前に具現化、しかも遜色ないストーリーになっている。
『鉄人28号』は格闘戦主体で飛び道具を全く持っていない(巨大で重量がある自身が飛ぶのだから本人自体が飛び道具といえる…かも)。作中で開発者の敷島博士は「平和のためのロボットなので余計な武器は持たせない」とその理由を語っている。これは原作と同じく「鉄人」の物語の重要な設定だ。
 同様に原作から引き継がれた「太陽エネルギー転換装置」と「独立連動システム」が、敵のロボットを圧する鉄人のパワーの源となっているのだが、操縦用のリモコンはデザイン面で大きく変わっている。持ち運びやすいアタッシュケース収納型のコントローラーで、「リモコン」というより携帯型の操縦席といった機能性重視のデザインだ。敷島博士の娘牧子に「Vコン」と命名されるが、正式名称は「ビジョンコントローラー」という。

『ゴッドマーズ』のデザインは原作から完全に変更された。全体的に70年代の合体ロボットのフォルムを意識した感じになっている。特記すべきは合体シーンで、4体のロボットが同時に手足のパーツに変形する段階で画面が4分割され、それぞれの画面で別のロボットが変形する。こういった同時進行する事象を画面分割で見せる合体シーンの演出効果はゴッドマーズが最初で、後のアニメ作品にも影響を与えたエポックメイキングな手法だった。
『鉄人28号』の前半期のほとんどの敵は、近未来の科学力で作られたロボットで悪事を行ない人心を脅かす。悪事の内容は盗みや脅迫、破壊行為など。こう書くと現実の犯罪と変わりないように思えるが、「人工衛星を大都市に落とすと脅して国家予算規模の金を要求」したり「1万人もの人々が働く工場を丸ごと溶解」するなどスケールの大きな悪事なのだ。さらに後半期からは宇宙魔王やグーラ王子という宇宙規模の敵が出現するなど、敵のスケールはさらに大きくなっていく。科学が発展しても犯罪の減少とは無関係で、むしろ内容は深刻になるという予言めいた「警告」が『鉄人』物語の世界に内包されているのだ。これは、横山作品共通のテーマをしっかり受け継いだものとうかがえる。

『ゴッドマーズ』の前半期の敵はギシン星皇帝ズールに率いられたギシン星人。全宇宙の征服をもくろむ独裁者のズールは、宇宙進出を始めた地球を障害とみなして「絶滅戦争」を仕掛けてくる。ほとんどのギシン星人はズールへ忠誠を誓っており、地球とタケルに冷酷な攻撃をしかける。中盤からはマルメロ星の支配者ギロン総統との戦いになるが、ギシン星もマルメロ星も地球より優れた科学力を持ち、軍事面において地球にはゴッドマーズ以外にほとんど頼るべき対抗手段がない。それゆえに圧倒的な敵が地球を滅ぼそうとするという、緊張感のあるストーリーが展開していくのだ。
『鉄人』のバトルアクションはストレートかつダイナミック。攻撃方法がパンチとキックと投げ技のみの鉄人に対して、大概の悪人ロボットは怪光線やミサイルといった飛び道具で鉄人を攻撃する。それを正太郎の巧みな操縦技術で突破し、得意の力感あふれる肉弾攻撃に持ち込んで悪人ロボットを撃破する瞬間は壮快だ。また悪人側が特殊な攻撃(鉄人を操縦不能にするなど)を仕掛けてくる場合もあるが、そのたびに敷島博士が対向する発明品で支援したり有効策を助言するなど、博士の策士ぶりも見どころとなっている。

『ゴッドマーズ』のバトルシーンは、敵メカとゴッドマーズとの直接戦闘の前に、敵戦士とタケルの生身同士で超能力によるバトルを繰り広げるパターンが多い。人間のしなやかな動きと派手な光線が飛び交う超能力バトルは『ゴッドマーズ』ならではの醍醐味だ。超能力バトルでどちらかが追いつめられるとロボットバトルへ移行するが、ゴッドマーズはとにかく「超」強い。合体すればたいがいの敵は1分とかからずに倒してしまう。それまで冷酷だった敵が最後にゴッドマーズの圧倒的な攻撃で粉砕される様には、カタルシスを感じずにはいられない。
最初の敵ブランチロボを倒したのは「フライングキック」だ。空中高く飛び上がってから急降下。戦車の弾も跳ね返した敵の重装甲を紙のように足で貫くという、鉄人のケタ違いのパワーを象徴するシーンだ。「フライングキック」はこの後も鉄人の定番の必殺技となる。(第1話より)

最強の攻撃技は「ファイナルゴッドマーズ」だ。第3話で初めて繰り出して以来、敵メカを倒すときはたいていこの技。腹から発射する光線「ゴッドファイヤー」で動きを止めて、剣「マーズフラッシュ」で敵を両断するのだ。ズール皇帝以外は誰も防御不能だった文字通りの必殺技。(第11話より)
複数の装甲車両が変形合体して巨大ロボットになった鉄人最初の敵ブランチロボ。重装甲・重武装で防衛軍の戦車や戦闘機に対しては無敵だったが、パワーは鉄人に劣っていたようで格闘戦で鉄人に敗れ去った。『鉄人』に登場する悪人側メカにはこのような二足歩行型が多い。(第1話より)

タケルが地球を離れた隙に地球基地を襲ってきた敵メカ。『ゴッドマーズ』の敵メカは写真のようなデザインが主流。優れた科学力によって作られた異星人のメカは、地球の兵器による攻撃を全く受け付けず、そのビーム攻撃は地球軍を次々となぎ倒していった。(第5話より)
鉄人を完成させた科学者の敷島博士。両親のいない正太郎をいつも見守る父親的存在だが、戦闘時では正太郎を的確なアドバイスや発明で支援する頼もしい仲間だ。第11話では敵の妨害電波で操縦不能になった鉄人に、サーバント・ロボ「08(ゼロハチ)」を送り込んで鉄人を回復させた。(第11話より)

タケルの双子の兄であるマーグ。敵の陣営にとどまりながら、テレパシーでタケルに地球の危機を知らせて陰ながら弟を助けていた。しかし敵に捕まり洗脳されてしまい、最終的にタケルと戦うことになるという兄弟の悲劇の物語は、本作品が名作としてブレイクする要因のひとつとなったのだ。(第11話より)
敷島博士の娘・牧子(通称マッキー)。ふだんの正太郎は牧子に対して軽口を叩いたりしているが、心の底では肉親のように大切に考えている存在のようだ。その証拠は、牧子が誘拐されて鉄人との人質交換を要求されると、何より大事な牧子を救う道を躊躇なく選択した事でもうかがい知れる。敷島博士を含む周囲の思案を押し切って、鉄人を悪人に渡してしまったのだ。(第7話より)

洗脳されたマーグを監視する冷酷な女戦士・ロゼ。物語が進むとタケルを憎悪する敵となるが、数奇な運命を経てタケルと互いに想いを寄せ合っていく…。彼女のタケルに対する感情の変遷は「大河ドラマ」としての『ゴッドマーズ』の大きな見どころだ。(第14話より)
姿を隠したまま攻撃をしかける幽霊ロボットに苦戦する鉄人。姿が消えるのは惑星間航行用のテレポート装置を積んでいたからだが、敵の落とした破片を分析して装置の仕組みを見抜いた敷島博士は、敵ロボットの探知装置を開発する。探知装置で位置を捕捉した正太郎が鉄人で敵を投げ飛ばすと敵は操縦不能に──! すかさずとどめのフライングキックを決めて撃破した。(第5話より)

ガイヤーと対峙した敵メカは、分身攻撃でタケルに位置を悟らせない。代わりにクラッシャー隊がコンピュータで敵の位置を割り出して攻撃し、分身を封じ込めた。敵は合体の動きに入ったガイヤーを攻撃して六神合体を阻止しようとするが、手足を構成する5神ロボが援護のビームを敵に集中射撃する。その間に六神合体を成功させ、瞬殺の必殺技「ファイナルゴッドマーズ」で敵を両断した。(第6話より)
「使う者によって神にも悪魔にもなる」というのが鉄人のキーワードだが、大事な「ビジョンコントローラー」が敵に盗まれる事件が多発した。結果、鉄人は敵の操縦によって街を破壊しまくる悪の手下と成り下がるのだ。この、何度も発生する、鉄人が敵の手に渡ると恐ろしいことになるという実証的な展開は、本作の「お約束」なのだ。(第2話より)

地球人に備わっていない超能力を持つタケルに不信感を募らせるクラッシャー隊員。ある日タケルがチームワークを乱したことからケンカになった。さらにタケルが敵と同じ異星人だと知れると「一緒には戦えない」と隊員たちは言い出す始末。しかしタケルの地球を愛する熱い思いを知ると、一転、和解して団結を取り戻す……。など、人間の感情の機微を描写したシーンがストーリーの要となる『ゴッドマーズ』らしいエピソードは、ある意味「お約束」である。(第4・5話より)
『太陽の使者 鉄人28号』という作品は、子供が楽しめる「勧善懲悪」のストーリーに大人も納得の社会的なテーマを内包している物語だといえる。しかも『鉄人』は、この2つをバランスよく融合させたエンターテインメントとして成功させているのだ。これは、突き詰めれば難しくなりがちな深刻なテーマを上手に練り込んだ各話の脚本が優れている証拠であり、「明るくピュアな少年で正義感の強い」愛すべき主人公・正太郎の存在が大きいと思われる。「勧善懲悪」を成したときは「少年」らしく素直に喜び、正義感の強さと純粋さで悪の裏に潜む「社会問題」を憂いているのだ。
 特に正太郎が憂いの表情を見せるシーンを大人の視聴者の視点で観ると、驚くほどの「問題提起」がされていることに気づかされる。大人にとっての『太陽の使者 鉄人28号』は、21世紀の現代でも鋭さを失わない紛れもない社会派アニメともいえるのだ。

一方『六神合体ゴッドマーズ』は20年以上を経た作品にも関わらず、現代的なドラマ性に満ちたアニメ作品だ。「状況に翻弄され苦悩しながらも運命に立ち向かう」登場人物たちのドラマは現在のアニメと比べても全く遜色がない。さらに、いい感じにもったいぶって、少しずつベールが剥がされていくような(秘密の判明や人間関係の変化といった事件の)情報露出のバランス感覚が絶妙なのだ。この先が知りたい! と思ったところで「続きは次回以降」となる一方、毎回新たな情報が明らかになるので、ストレスを感じずに、ハマると自然と観続けてしまう中毒性の魅力があるのだ。
『六神合体ゴッドマーズ』は「地球の運命をかけた戦い」という壮大なテーマでありながら、見る者を飽きさせない娯楽性をとことん突き詰めた作品なのだ。
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