村井さだゆき氏 代表作:
映画「スチームボーイ」「千年女優」「パーフェクト・ブルー」
TVアニメ(シリーズ構成)「キノの旅」「ブギーポップは笑わない」
TVアニメ(脚本)「カウボーイビバップ」「デビルマンレディー」
ほか・・・

★京極作品のお仕事の依頼が来た時の気持ちをお聞かせ下さい。
京極作品とは嗜好が同じなので興味はありました。映像化は難しいと思いましたけど、他のスタッフのお名前を聞いて是非やりたいと思いました。

★監督、プロデューサーからどんな注文がありましたか?
最初に打合せしたときに、江戸のものとは思えないキャラクターと美術をどう解釈するか話をしました。つまり、まったく違う世界にしてしまうと京極作品の魅力が伝えられない。だから江戸時代の妖怪を信じていた人達の世界を忠実にやりたいと思いました。妖怪のように見える人達が歩いている世界。当時の人は妖怪を信じていた訳ですよね。現代の人達は、妖怪を信じていないから異物として写るけれども、当時妖怪というものを信じていた人の世界は、ひょっとしたらおどろおどろしいものが跋扈しててもおかしくない世界なんじゃないかという解釈でやりました。プロデューサー、監督も同じ考えでした。

★30分という時間は短かったですか?
そこが毎回1番苦心しました。原作では謎が最初にあって、又市たちがそれを突き止め、それから仕掛けが始まるという形の構成になっています。ミステリーの構造ですね。それを30分でやるには無理があるので、謎と仕掛けが平行して走りながらクライマックスを迎えるようにしなくてはならない。又市たちは分かっているけど、百介は分からなくて右往左往する。視聴者が混乱する構成にはなっていますけど、それはあえてねらいだったりします。

★今までの作品と比べて、今回の作品はいかがでしたか? 苦労された所などありましたら教えてください。
毎回違いますが、原作があって、それをアレンジすればいいだけのものと、オリジナルで作った方がいい話もある。この作品に関しては、モチーフの魅力がまず先にあります。例えば僕が脚色した「帷子辻」は「帷子辻」という場所に起こる怪、そのこと自体が魅力。妖怪という原型があって、それを京極風にアレンジしたものが原作にある。それを受けて、じゃあ同じ味付けにするか、それともこちら(アニメ側)のアレンジにするか、その料理の仕方ですよね。だから、元の料理の味が美味しいだけに、そのどの部分を取ってくるか、どの部分を外すかの取捨選択の部分と、30分の中での辻褄合わせの両方やらなければならないので、そこが非常に難しい作業です。
もう一段階先で考えなきゃいけないのが、恐さの描写ですよね。これは監督とも相談してやっていることなんですが、やっぱり、「怪異」「妖しい雰囲気」そういったものは見せたい。じゃあ、ショッキングなシーンを連続してやればいいのかということでもない。ジワっとくる恐さもなければいけないし、そこにまた人間の心理的な恐さも入ってなきゃいけない。そういったものを、今回は突き詰めていきましょうと。原作はミステリー構造だから謎解きがキーになっている。それに我々アニメスタッフはもう少し違った魅力として、そのホラー的要素を味付けしていく。実際に原作では「怪異」というのは何も無い。この世に不思議なことは何もない世界。でも、そこはアニメーションの魅力として、怪異が実際に起こっているような描写も入れていきましょう、と。後半は怪異よりやや謎解きに傾くのですが、終盤に向けての方向性や伏線のはり方をライターみんなで相談してやりました。

★「孤者異」(第9話)はホラーテイストですね。
「孤者異」は原作がおぎんの話です。本当は何の怪異も無く、全部仕組まれたこと。そこにどうやって怪奇現象を盛り込むか?「帷子辻」では実際にちょっとラストのあたりで、怪奇な描写がある。それは心理的なものかもしれないし、そうじゃないかもしれないという描写をしています。それに対して、原作では妖怪としての「孤者異」は出てきませんが、モンスターホラー的な要素を入れて、変身してしまう者の恐さを出してみようと。もちろんベースはおぎんの話で、そういう要素をまぶしつつやってみました。

★お気に入りのキャラクターはいますか?
レギュラーでも長耳とかすごく魅力的ですね。又市たちは裏で動いている事が多いので、出し方が難しいんです。今回担当した話数はたまたまおぎんがメインで、内面の描写も少ししています。百介で面白かったのは、藤岡さんが書かれた第8話「野鉄砲」とのつながりで、僕の書いた「帷子辻」でお兄さんの話をちょっと前振りしたりして・・・。そういうライター同士の協力関係で、人物背景に奥行きを出しました。

★豪華なライター陣が参加されていますが、何かエピソードはありますか?
僕のシナリオの枚数が多いので、こんなに入るなんて信じられないと高橋さんがびっくりしていました。アニメと実写でシナリオに違いはないのですが、あえて挙げるとすると、アニメのほうが多少ボリュームが多めに入るんですね。ただ、ホラーの場合、ジワッと来る演出の余地を残すため、枚数少なめにしておきたいところなんですが、原作の内容をあれもこれもと入れたくなると、どうしても行数オーバーになってしまう。多分、藤岡さんや高橋さんも苦労していると思いますよ。

★特に意識して書いた所はありますか?
たまたま京都と江戸の2つの土地の話だったので、江戸時代の京都の文化、江戸時代の江戸風情などをかなり意識して書いていました。京都弁を使いたくて、舞台を島原に持っていきました。僕は関西出身ですから。

★声優さんから台詞が素晴らしいという意見がありました。
スタッフからは難し過ぎるよ!と言われました。でも、それが京極作品の魅力ですしね。

★実際声優さんの声を聞かれていかがでしたか?
キャラクターを見たとき、又市は中尾さんじゃないかなって思っていたら、本当にそうなったのでびっくりしました。おぎんもぴったりだったし、長耳はキャラクターの顔だけ見ていると、若本さんて思い浮かばなかったんですけど、声を当ててみたら、これほどぴったりな声はないと思いました。百介はナイーブなところが表現されていて、関さんも上手いなと思いました。4人ともすごいヒーロー然としたキャラクターにはしたくなかったので、合っているのではないでしょうか?

★見所を教えてください。
多分京極作品ファンの人は、元から映像化というのは難しいと理解してもらっていると思うんです。その上でこういう味付け(アレンジ)も面白いな、というところを発見してもらいたいし、そういう工夫は毎回しているつもりです。同時に映像にした時の面白さ、それは読書した時のイメージとはまったく違う世界かも知れませんが、その辺の描写の面白さも見て欲しいです。あとは人間の心の闇、「怪奇」についての我々アニメスタッフ側の解釈も、一緒に楽しんでもらえたらなと思います。


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