宮繁之氏:
「PROJECT ARMS」(作画監督)
「ルパン三世 ファーストコンタクト」(作画監督補)
「スクライド」(原画)

★京極作品のお仕事の依頼が来たときの感想を教えてください。
作画の平山さんのお手伝いで東京ムービーに来た時に、大石プロデューサーから声をかけて頂いたのがきっかけです。もともと妖怪ものが好きで、自分に合っていると思いましたので、受けさせて頂きました。

★京極先生の作品は読まれた事はありますか?
水木しげるさんがすごく好きで、その流れで京極さんの作品に触れる機会は多かったです。

★監督、プロデューサーから、どんな注文がありましたか?
ほとんど大石プロデューサーとの二人三脚で生み出していく作業でした。どういうものが今の社会に望まれているか、スポンサーの要望にどう応えるかを最優先に考えていくべきことなんでしょうけれど、今回はそういった事よりも、思いっきり好き嫌いの分かれるクセの強い、自己主張のあるものを作ろうと心掛けて作ってきました。監督も僕らも目指している方向が一緒だったので、みんなでなんとか形にしていこうとやってきました。

★京極先生の作品をアニメキャラクターにするのは難しかったですか?
実写の又市が男前だったので、アニメでどう見せるか、ものすごい数のキャラクターを作りました。京極作品をアニメ化するにあたって、クセの強い世界観そのものを作るよう、思いきって極端な方向へデザインしました。

★サブキャラクターにも凝っていますね。

京極作品をアニメでやる意義は、世界観そのものをデザインして作品として仕上げようということでした。彼らが着ている服装も時代にあったものではなく、自由にやらせてもらっています。追い込まれていった人間が1番怖いんだということがきちんと描かれなくてはいけなかったので、日常をちゃんと描かれないキャラクターではダメだということがありました。

★思い入れのあるキャラクターを教えてください。

一番注文が多かったのはおぎんですね。自分にとっては、おぎんも又市も長耳も全て同じぐらいの思い入れはあります。全ての部分に注目があたるように、彼らがちゃんと生きて、その日常の中に存在しているという空気を出したかった。デザインだけでなく、色とか全体でキャラクターを作り上げてきたので、他のスタッフもみんなに愛情を持っていると思います。
★ボードも沢山描かれたようですが…。
京極さんの世界観を表現する時に、どういった方向でイメージを固めていけばいいかということがありました。刀をすごくリアルに描きたいのなら、資料を見て模写を重ねていけば再現することができますが、今回は心理描写を浮き立たせる為に、あえて強い形でディフォルメされている部分があります。共通イメージを固めるまでの作業に時間がかかりました。おぎんが一人で歩いている絵は、ようやく世界観が固まり、方向性が決まった最終的なボードです。

★特に苦労されたキャラクターはいますか?
おぎんですね。どちらかというと男性を描いている方が感情移入しやすいんです。又市と長耳とおぎんは眉毛が無いので、アニメの表現として驚きや悲しさを表現しにくいんです。目が大きいアニメ独特のディフォルメされたキャラクターにはしたくなかったので、わざと流線型の目にしています。鉛筆の線一本で変わってしまうので、おぎんには悩まされました。また、女性の指先やフォルムの美しさ等は、そういった表現技術に長けた先輩アニメーターの渡辺裕子さんや小林利充さんのお力によるところが大きいです。

★見所を教えてください。
人が死ぬことは本来エンターテイメントではなく、やるべきではないと正直思います。この作品は、そういった過激な表現もありますが、いわゆるスプラッタームービーではありません。本当に目を背けてしまうような事も人間の一部なんだ、そういう表現の中でアニメーションが成立するのか、というところから始まっています。過激な表現が見所というのは非常に危ないですが、一番怖いのは人間であるという雰囲気が毎話数入るように、追い込まれていく人間のせつなさが出ていれば、多分そこが見所だと思います。上手く風情が出ていればいいなと思います。


©京極夏彦/TMS・東宝・CBC・RKB・RCC

(C) 2006 TMS ENTERTAINMENT,LTD. All Rights Reserved.