藤岡美暢(ふじおか・よしのぶ)氏:
映画『富江』シリーズでホラー界で著名な脚本家。 今回の作品ではシリーズ構成として参加。
代表作:
「富江 re-birth」「富江 最終章〜禁断の果実〜」「亡霊の棲む家」等(脚本)

★今回のお仕事の依頼がきたときの感想を教えてください。
怪談話に見立てて、実は人間の心の闇を見せるドラマということだったので、非常に面白そうだなと思いました。
最近、人間ドラマが描かれないホラー作品がありますが、ホラーの原点は人間の恐さにあると思うんです。「巷説」では人間の恐さを充分に表現できたので面白かったです。

★アニメと実写の違いはありますか?
実写と比べると、アニメの方がやりやすいですね。実写の経験がある人は、アニメをやると感じることだと思いますが、実写はお金の面も含めた制限があって、撮影できないことが多いんです。新宿のど真ん中で撃ちあいのシーンを撮りたくても、そのシーンを撮るにあたっての許可が必要になる。車やビルを壊すにも、お金の問題でNGになる。アニメも規制が色々あるでしょうが、実写に比べるとはるかに色々なことが出来る。面白い表現が出来るという点が楽しいです。

★プロデューサー、監督からどんな注文がありましたか?
恐くして欲しいということですね。人間ドラマを描いて気持ち悪いということと、映像を見ていて恐いというのは違いますから。地味に面白く、恐くするという方法もあるんですが、プロデューサーから見る人がわかりやすい恐さを見せ場として作ってほしいと言われる。こけおどしではなく内容と一致した恐いシーンをどう入れていくか、ということが一番難しい注文でした。他は比較的、こっちがやりたいことを提案すると、プロデューサーも面白いのでやりましょうという感じになったので、とてもやりやすかったです。

★30分に脚本をまとめるという作業は難しかったですか?
正直あの原作で1話を30分にまとめるのは難しかったです。アニメは実写の30分より中身を多く入れられるんですが、原作を読むと1時間、中には映画にしてもいいようなものもあったので、どこを膨らませて、どこを切るかという作業はかなり苦労したところです。

★思い入れのあるお話はありますか?

全ての話に思い入れがありますが、一本選ぶとすると4話の「舞首」が好きですね。4話目以降、5話目からは乗って書けましたね。

★キャラクターをつかんできたからですか?
それもありますが、6話から他のライターの人達が入ってきましたよね。そこから刺激を受けました。他のライターと交代でやるということで、負けられないという気持ちもありましたから。最初は自分のペースで書いていて、他の人の話が出来上がった頃から、自分の色を出そうと思い燃えて書いていましたね。

★「巷説」は有名な脚本家揃いですが、ご一緒にお仕事されていかがでしたか?
実写では、特に映画では一人で書くことが多いんです。自分以外の人がどういうものを書いて、どのようにして話を作っていくのか、プロットからシナリオになるまでを通して見られたので面白かったです。

★キャラクターの声についてはいかがですか?
アフレコは全部見ているわけではないですが、百介、又市などメインキャラクターの声をひと通り聞いて、全然違和感ありませんでした。違和感が無いどころか、自分が書いたということを忘れてアフレコを見ていました。非常に良かったと思います。

★書いていて動かしやすかったキャラクター、お気に入りのキャラクターは誰ですか?
百介ですね。目的とか欲望があると動かしやすいですが、又市達はそれを感じさせない。あと作家志願の百介の世間ずれしていない所などは、物書きにはこういう感じの人が多いよな、と思いながら書いていました。百介の純粋な部分は誰にでもあるんだろうけど、やはりそこはライターの資質とあわさって、自分が百介だと思って書いているところはありました。なので、百介に感情が入りやすかったですね。

★作品を通して視聴者に一番伝えたいことを教えてください。
人間の恐さです。今の実写やアニメは、人間を優しく描きすぎている気がします。それは上辺だけの優しさで、本当の優しさではないと思うことが多いんです。それに、本当の人間は恐いものです。人間の恐さを描くとことで、本当の優しさって何だろうかということを問いかけられたらいいと思っています。

★恐さを表現するということは難しい気がします。
難しいけど面白いですよ、恐さを表現するのは。例えば笑いや優しさを表現すると人によって差がありますが、恐さに対しては同じような反応を示すんです。恐さには共通した部分が多いと思います。こっちが、これは恐いぞって書くと、受け手も恐い!という反応が返ってくるんです。それがホラーを書く快感かもしれません。

★ホラー作品を観て、恐い!と思うことはありますか?
子供の頃からホラー好きだったんですが、最近は恐いという感覚が麻痺してきました。ホラー映画を見ても、驚くことはあっても恐いってことが無くなってきて、今回はこのパターンか…と醒めて見てしまうんです。深夜一人で恐いビデオを見られるようになりましたから。(笑)
以前に住んでいた部屋が、会社の事務所ばかり入っているビルで、夜になるとビルに自分しかいなくなるんです。その時、一人で見た「女優霊」は恐かった!

★京極先生とはお会いになられましか?
京極さんはアニメはこちらにおまかせという感じでしたので、顔をあわせた程度です。
京極さんが描く人間ドラマを30分にまとめてしまっているんですが、全部を通して見れば、原作者の意図からずれたことはしていないと思います。伝えたいことは、かなり伝わるっているのではないでしょうか。

★最後に、見所を教えてください。
13話全部を見て欲しいです。1話1話見所があって、色々な表現と人間の恐さを書いています。ホラーではなく人間ドラマとして描いているので、考えさせられる部分が多いと思います。この話に出てくる人間の恐さ、業は誰もが持っているものです。それが大きくなって、抑えがきかなくなると心に妖怪が現われます。これは他人事の恐さではなく、自分の中にある恐さの話しです。もしかしたら自分にもこういう恐い面があるかもしれない、自分だけがいい目を見ようとしたら、嫉妬したら、愛しすぎたら……。『巷説百物語』は、お化けの恐さというよりは人間ドラマ、人間の恐さを見てほしいです。


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