★お二人が出会ったきっかけを教えてください。
大石P:
自分がタツノコで某作品の制作をやっていた時に、殿勝さんに作品に参加してほしいという気持ちがあったんです。
殿勝監督:
その時、僕は「テッカマンブレード」のビデオの監督をやっていたんです。
大石P:
結局その時一緒に仕事をすることは叶わなかったんですが、殿勝さんが「テッカマンブレード」の後、東京ムービーで「バーチャファイター」の監督をやっていて、そこで再会しました。ルパンでは「1$マネーウォーズ」が最初だったかな?
殿勝監督:
「ルパン」では「愛のダ・カーポ」の演出が最初ですね。ムービー作品では「デビルマンレディー」、「あやつり左近」でも演出をやっています。
(左から:殿勝監督、大石プロデューサー)
大石P:
監督の得意なジャンルは何ですか?以前ギャグって言っていましたよね?
殿勝監督:
ギャグとアクションかな?
★「巷説」のアニメ化企画を立ち上げたきっかけを教えてください。
大石P:
最近、色々な女の子のタイプが出てくる男の子向けの作品や、キャラクタービジネスありきの作品が多いじゃないですか。特に深夜はコア層相手の作品作りになっている。「アニメファン=オタクの男」という図式になっている。そうじゃなくて、渋谷や大手町などを歩いている普通の女の人にアニメの面白さを伝えたかった。女性も支持してもらえる作品として選んだのが京極さんの作品。京極さんのファンは、圧倒的に女性が多いらしんです。実写でも「リング」シリーズや「陰陽師」といったホラー系が、良い興行成績を残している。他の作品との差別化ということもあったし、こういう作品をやることでアニメーションの間口が広がれば良いなと思ったんです。
★アニメ化が決まり、殿勝監督を起用した決め手は?
大石P:
「デビルマンレディー」もそうですが、殿勝監督は必ず東京ムービーのおどろおどろしい作品に関わっているんです。「デビルマンレディー」「あやつり左近」で僕はAPをやっていたんですが、どちらの作品も大事な話数は殿勝さんにコンテと演出をお願いしています。 監督のスプラッタ的な表現はストレートでわかりやすいんですよ。なので、こういう作品をやる時には、絶対に監督に声をかけると決めていました。
★独特な世界観の作品となっていますね。
殿勝監督:
京極さんの小説ファンの方は時代劇のイメージでご覧になると思うのですが、パッと見て時代劇と感じるような世界は作りたくなかったんです。どこの世界かわからない、特殊な世界作りをするというコンセプトを大石プロデューサーが練ってこられた。例えば神社の鳥居が、誰もが想像する鳥居とは違う形であったり、色も赤ではなかったり…。通常の作品とは違って、既成概念に囚われない、想像がつかないような世界を作りたかった。その点は皆が苦労したところですが、「新たなもの作りの集大成=巷説百物語」になればいいなと思っています。
大石P:
京極さんの描く「表があって裏がある」という世界をビジュアル面からも作りたかった。世界の裏にカメラを置いて物を考えた時、恐らく僕らが生きている世界の見方が変わってくるだろうと思うんです。「巷説」に描かれている世界観は、皆さんが考えている江戸末期とは違う。あえて写真を参考にして、リアルな江戸時代を考えることは一切していない。この世界をビジュアルにすることが大切な作業でした。
★放送上、表現に規制があったと思うのですが・・・。
殿勝監督:
恐いものを見たい、感じたいというのが視聴者にあると思うんです。事実、様々なホラー作品がヒットしていますよね。アニメーションはどこまでリアルに描いても“絵”で、見ている人が実際に感じる痛み、苦しさや辛さをどこまで感じて貰えるのかが難しい。その辺りの表現を意識して作りました。
大石P:
放送上の対処の仕方としては、血を透過光で見せたり、気持ち悪さを幻想的な表現にしたりしたんですが、オンエアできない部分もやはりあります。DVD化する時は、差し替えカットも出てきます。DVDでしか見られない「巷説」の世界もありますので、ぜひそちらも見てほしいですね。
★制作時の面白いエピソードはありますか?
大石P:
又市は身長が100センチぐらいなんですが、この又市が出来上がるまでに30体くらい描きました。京極先生や企画協力していただいた雑誌「怪」の編集部は、又市をつかみ所のない、カッコいい系のキャラクターとしてイメージしていたらしいんですが、我々は背景と世界観を含めたキャラクターの開発を意識してきたので、又市の背の低さについては特にこだわりました。デザイナーから最初は八頭身の美形ばかり出てきましたから。最初はかなり意見の食い違う部分はありました。
殿勝監督:
あとは、やはりホラー物をやると言うことで、皆でお払いに行きました。それでもあちこちでコンピューターがクラッシュしたり、スタッフが原因不明の体調不良になったという現象はやまほど起こりました。
★キャストの方々についてはいかがですか?
殿勝監督:
キャストの皆さんは、とても熱心に演じてくれています。又市役の中尾隆聖さんは、こんな格好良い台詞を言えるなんて嬉しいとおっしゃっていました。背がとても低い又市ですが、中尾さんの声で台詞が入ると、とても格好良い!又市ってこんなに格好良かったんだと…(笑)。中尾さんをはじめ、百介役の関さん、おぎん役の小林さん、長耳役の若本さん、皆さん原作まで熱心に読んでいただいてもらった上で、素晴らしい芝居をしてくれています。
又市が倒す敵は1話しか出てこないのですが、この豪華なレギュラー陣に張り合えるようなゲストではないといけない。悪役が良いと、主人公達も活きてくると思いますし…ですので、ゲストにも驚くような豪華な顔触れが並ぶ形を取らせて戴きました。これも「巷説」の魅力の一つですよ。
大石P:
複雑な人間ドラマを演じるには、高い演技力が要求されますよね。作品の味を出すために、必然的にゲストも豪華な配役になっていきました。
★豪華な脚本家陣が揃っていますが?
大石P:
ホラーは人間がどうして恐くて哀しい行為をしたのかきちんと描かなくてはいけない。「巷説」の複雑な心理描写をきっちり描いてくれるということから、藤岡さん達に脚本をお願いしました。明確に伝わりやすいように原作を変えている所もありますが、先生にもご理解いただいています。
★京極先生からの注文はありましたか?
大石P:
悪党を懲らしめるために、彼が一番愛する人間を又市が見殺しにするというお話を作った時、又市のヒーロー性に関わる問題だということで、先生から反対意見をいただきました。弱い者、悪いことをしていない者には、又市達は一切手をかけない。そこだけは気をつけてほしいといわれました。
★好きなキャラクターを教えてください。
殿勝監督:
あえていうと、おぎんかな。謎めいた所が好きです。
大石P:
白庵黒庵が好きです。
★視聴者にむけて見所やメッセージをお願いします。
殿勝監督:
とにかく、見たことのないような世界を見せたいということで作っています。ビックリ箱を開けるようなつもりで見ていただいて、見終わった後に呆然としていただければ嬉しいです。
大石P:
大人がみても面白いお話作り、絵作りを心がけました。その分、話が複雑な部分もありますが、期待していただければと思います。
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