立体アニメーション「家なき子」。しかし、立体と言っても現在目にするようなCGでもなければ、赤と青の異なったガラスをはめた眼鏡を使用して見る物でもない。
「家なき子」で使用されている技術は「ステレオクローム方式」。これは国際的に著名な学者で、技術者でもあるレスリー・ダッドレイ氏の発明によるもので、左右明るさの異なる眼鏡をかけ、あらかじめ計算された作画を見ることにより、奥行きを持った画面を楽しむことが出来るのである。

この技術の特色は、わざわざ多重画面にしなくてもよく、モノクロ画面でも同一の効果が楽しめるほか、眼鏡がなくてもその臨場感を視聴者へ伝える事が可能である点だ。

この方式の基本は、人間の目から視神経を通過して脳に伝達される速度が、明るい像と暗い像とでは伝達速度に誤差が生じる(明るい像は暗い像より視神経を伝わる速度が速い)特性を活用したものである。従って、片方のレンズを暗くすることにより、必然的に脳に伝達された左右の像に誤差が生じてくるのである。
しかし、この方式には唯一の弱点が存在する。視神経の伝達誤差を利用するので、絶えず画は相対的に動いていなければならないのである。従って基本的な演出方法としては、
※下から順に、背景画−背景動画−人物 と、セルが重なっている場合

・背景画を少し右に動かす
・背景画の背景動画を大きく右へ動かす
・人物を左に動かす

この3枚の相対的な動きを、この眼鏡を通じて見ることにより立体感を味わう事が可能になるのだ。
したがって、本作品をじっくり見ていただければこれまでにない演出技法が取り込まれているのが良く分かると思う。例えば、じっとたたずむ人物をいかに立体に見せたら良いのか、止め絵の演出処理等、当時のスタッフの試行錯誤が画面から感じ取る事が出来る。

この方式は、人間の視神経と脳との誤差を利用しているので、人によっては効果が薄い人もいるそうである。体質的な問題なので、気にすることはないそうである

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