TV版「六神合体ゴッドマーズ」(以下GM)は、日本テレビ系で放映された「太陽の使者 鉄人28号」の後番組として、1981年10月2日開始した。
同じ横山光輝原作のSFものとして、「鉄人」後半で付き始めた中高生ファンを意識し、より複雑な人間ドラマを描く事に挑戦したと語られている。 当時、ロボットアニメと超能力ブームは男子を中心に最高潮に達し、「GM」もその波に乗る事を狙った。
ところが蓋を開けてみると、GMに付いたファンは圧倒的に女子の方が多かったのである!
これは本橋氏がインタビューで語っている様に、スタッフ側の全く予期しない事態だったらしい。
既に有名な話だが、絶大な人気を誇ったマーグの死の情報が伝わるや、それを阻止する嘆願書やカミソリ入脅迫状が山の様に届き、 ついには日本テレビで葬儀が出される騒ぎになった。
かと言って男子ファンが付かなかった訳ではなく、プラモデル玩具も最も多種の商品が売り出された。現在10倍以上のプレミアが付く物もある。

アニメーションの特徴は、簡単に述べると、「画面の美しさ」「共感できるストーリー」であろう。
画面の美しさとは、当代随一の美形キャラクターは勿論、透過光技術と美術、動きの美しさである。特にGMは光の処理が斬新で、明るく派手な画面で知られた。
そして動きの面白さ。超能力者同士のバトルやガイヤーのアクションはスピーディーで軽快、 対して合体後のGMは、じりじりと敵を威圧し一撃必殺で倒す。(この重量感が番組終了の合図だった)
金田伊功アクションの流れを継ぐ、若手作画スタッフによるメリハリの効いた個性的な描写はマニアックなファンの間でも話題を呼んだ。
新技術が次々開発された、光の妙技!
またストーリーは、勧善懲悪の王道ロボット物としてシンプルに作られ、そこに緻密な人間ドラマが絡む二重の面白さがあった。 (初めて絵をご覧になる方は、このキャラクターとロボットが同じ作品に思えないのではないだろうか?)
藤川氏は、当時の世相を反映し、「絆」をテーマに親子・兄弟・友人・師弟などの人間愛を描いたと語っている。
その為セリフも気恥ずかしい程のストレートな言葉になって視聴者を痺れさせた。なにせ「名セリフ集」が雑誌付録に付いた位なのだ。
このセリフを喋る声優陣も凄かった。若手人気声優の水島裕、三ツ矢雄二に、ベテランの石丸博也、鈴置洋孝、大御所の富田耕生、納谷悟朗。
GMは、全体に於いて若い感性とベテランの手腕がバランス良く融合した作品だったと言える。
付け加えたいのは、GMがアニメ初仕事だった若草恵の音楽。TMSには、GMのレコードほぼ全て(主題歌から未収録BGM集に至るまで) に対し、ヒット御礼の感謝状がキングレコードより贈られている。

──だが、ここで何を書いても、「GMと言えば」熱狂的としか言いようのない、ファンの盛り上がりの印象の方が強い。 アニメ最全盛期の当時、7誌あったアニメ誌でGMの特集か付録のない号は無かったと言えば、少しはその熱が伝わるだろうか。

「15%を割ったら打ち切り」と宣言されていた視聴率も第3話で17%を越え、無事放映が続く事となったが、その後2度も 延長を重ねて1年3か月間に渡るとは、誰も予想しえなかったろう。 この延長分がエピソードの分け目となり、ギシン星編(1〜25話)、マルメロ星編(26〜51話)、地球編(52〜64話)と名付けられる。 26話以降は予定されていなかった為、制作状況はますます厳しくなった。
「GMの思い出」を当時のスタッフに尋ねると、まず「過酷なスケジュール」の話が出る。
「鉄人」と同じスタッフ編成。原作付きでありながらオリジナル開発要素が多い。──準備期間不足の苦しい立ち上げから ズレ込んだスケジュールは最後まで取り戻せなかった。なんと、毎話1カ月半で制作していたと言う。 こんな作品は類がない。今のシステムでは絶対不可能である。

この辺は裏話を参考にして頂くとして、原作について少し触れたい。
原作「マーズ」は破滅のラストを迎える為、TV向きに変更する事が許され、結果的には「マーズの命が地球の運命を握る」と 言う核のみを残し、他はオリジナル設定となったのである。 (ちょうど今、「マーズ」の文庫版が発売中なので、知らない方は是非ご一読頂きたい)
そしてTV放映終了を待たずに、劇場化される事になる。

1982年12月18日公開した劇場版「六神合体ゴッドマーズ」は、熱心なファンの署名の力で実現した。 署名数は約12万人。製作側は、限定ポスターやフィルムに数百名分のファンの名前を入れる事で感謝を表した。
キャッチフレーズは「お正月のアニメはこれ一本!」(同時期、「E.T」も公開した)
だが、期待ほどの成果は得られなかった。
理由の大半は早すぎる公開。只でさえ厳しいTV制作の中、同じスタッフで劇場版を作るには、新作を諦め、ギシン星編のダイジェスト編集 と言う形にせざるを得なかった。これは当然ファンを失望させた。そのファンの中には受験生も多く、その為に観に行けなかったと言う 苦言の投書もあった。
作り手と受け手の状況を良く見て翌年春か夏公開であれば、双方が望んだ「オール新作」となり、その後の展開も大きく変わっただろう。
しかし、困難な中で出来うる限りの新作カットも起こし、その部分に関しての評価は高かった。
はじめから、ひたすら突っ走り続けた勢いが、結果的に「GM」の若さ、熱さ、瑞々しさのイメージに繋がったのかも知れない。

それを考えると、運命であったようにも思う。

TV・劇場が同時に終了する頃、人気キャラであるマーグのサイドから描かれた小説「十七歳の伝説」(藤川桂介氏著)が発売された。
その6年後の1988年、その小説の内容を基に、OVA「六神合体ゴッドマーズ 十七歳の伝説」が作られた。
そのいきさつは、TMSと東宝でOVA企画を探しており、根強く続いていたGMファン活動に注目したとの事。 ビデオ作品のターゲットとしてハマると判断されたのだ。
この情報はファンを驚かせ、戸惑わせた。 メインのスタッフ・声優共、TVと同じ顔ぶれが揃ったが、年月によって変わったもの(絵柄や設定など)が幾つかあったからだ。
そんな中、OVA発売に先駆けて1988年4月、砂防会館にて1000人招待の試写会イベントが催された。
制作スタッフ、声優らが舞台でトークを繰り広げ、同窓会の様な和やかな雰囲気であったが、忘れられない事が起こった。
ラストシーンのマーグとルルウのキスの瞬間、「イヤーーーッ」と一斉の悲鳴が上がり、音声が全く聞こえなくなってしまったのである。

この時、おそらく全員が判ったのだ。

6年経っても、いや何年経とうと、GMキャラはファンの心の中で変わらず生き続けていた事を。

これ程までに人の心に浸透しきった「ゴッドマーズ」とは、一体何だったのか。
──多分、見る人の最もピュアな精神に刻みつけられた、青春そのもの──ではないか、と想像する。

Copyright (C) 2000 TMS ENTERTAINMENT,LTD. All Rights Reserved.