シリーズ初盤、けんらん豪華な王宮絵巻の中で華麗な活躍を繰り広げるオスカル。そしてストーリーがフランス革命へと向かう中、中盤は危ういアントワネットの恋と生活、そして平民の実態が描かれ、その中でオスカルの人間としての苦悩が描かれた。シリーズ後盤、物語の視点ははっきりと平民の側へ移っていく。これは、あくまでアントワネットの生涯を軸とした原作と違う部分でもある。
 ここではもちろんアニメ版に限定、ついに革命軍に身を投じることになるオスカルの、波乱に富んだ愛と戦いの軌跡を追った。

1話〜12話《貴族の誇り、王室への敬愛。そして密かな恋心》
 跡継ぎのいないジャルジェ家で男として育てられたオスカル。近衛隊長に任命され、「女のお守りなどしたくない」と言い放った時、彼女は14歳だった。
 やがてアントワネットの人柄に触れ、敬愛し、彼女を守ることに本心から身を呈するようになるまで、そう時間はかからなかった。自分の任務をまっとうすることに情熱をそそいだオスカルは、近衛連隊長に就任する。貴族の誇りと王室への敬愛に生きた、10代のオスカルだった。
 一方、アントワネットを落馬させたことで死刑を言い渡されそうになったアンドレを身を呈して救ったオスカル。ここでアンドレはオスカルのために命をかけることを密かに誓うが、同時にオスカルへの男としての愛も、確かなものとして育ち始めていたのだった。しかしオスカルの胸の内には、スウェーデン貴族フェルゼンへの淡い恋心が育っていた。

13話〜25話《王侯貴族への疑問。そして恋心との決別》
 ベルサイユでは、アントワネットが皇太后としての貫禄をつけ始めていた。純真だが自由奔放なアントワネットにハラハラするオスカル。そしてついに、フェルゼンと激しい恋におちるアントワネット。オスカルもまた、フェルゼンに女と
しての感情をかき立てられるのを止めることができない。オスカルの心中を察しているアンドレは、オスカルを見守るしか術はなかった。
 そんな中、オスカルはしだいに民衆の生活の実態を知るようになる。王侯貴族の搾取と悪政にあえぐ姿を見て、無邪気にぜいたくな生活を続けるアントワネットに苦言を呈するようになる。王室への敬愛と貴族の誇りにも疑問を持ち始めるオスカルだった。
 一方、オスカルの気持ちも知らず恋の悩みを打ち明けるフェルゼンに、オスカルの心は乱れる。オスカルを見守るアンドレもまた、心中おだやかではない。アンドレはオスカルへの愛をはっきりと自覚する。そんな中、フェルゼンは、我が身を引き離すかのようにアメリカ遠征軍に参加し、旅立ってしまう。
 そして4年後、帰国したフェルゼンは、恋を断ち切ったと言いながら、不穏な国状の中、やはりアントワネットを放ってはおけなかった。そんなフェルゼンへの想いを断ち切るために、一度だけ女として彼に接することを決意したオスカルは、初めてドレスに身を包んで舞踏会へ出向く。正体を隠したままフェルゼンとメヌエットを踊り、その腕に抱き締められると、オスカルは密かに恋に決別するのだった。

26話〜30話《男として生きる決意》
 その後、黒い騎士を追跡中にケガを負ったオスカルは、ロザリーにかくまわれる。あまりに貧しいロザリーの生活に、市民の貧困を我がことのように実感するオスカル。そして貴族の屋敷ばかりを狙う義賊、黒い騎士の存在。それを捕らえることを躊躇するアンドレの姿……。時代が確実に動き始めているのを、オスカルは感じ取るのだった。
 だが、オスカルを実際の行動に移らせたきっかけは、やはりフェルゼンの存在だった。アントワネットと別れたフェルゼンは、「初めて会ったとき、君が女だと気づいていれば……」と心揺れる言葉をオスカルに投げかける。すでに心を決めていたオスカルは態度こそきっぱりとしていたが、内心は激しく揺れていた。そんな気持ちをふり切るように、オスカルは恋も愛も捨て男として生きる道を選ぶ。近衛隊をやめ、より激しい勤務への転属をアントワネットに申し出るのだ。
 一方、オスカルへの想いを秘め続けていたアンドレは、黒い騎士に傷つけられた目の失明の恐怖もあり、不安な気持ちをとうとうオスカル本人にぶつけてしまう。力ずくでキスをして、「愛している」と告げるアンドレ。
 オスカルはアンドレの自分に対する愛に戸惑いながらも、わざと突き放そうとする。だが、アンドレは「オスカルを守れるのは俺だけだ」と決意を変えない。やがて、衛兵隊に配属されたオスカルを待っていたのは、貴族の女隊長を拒否する平民出身の男たちだった。軍人としての実力を示していく以外、隊員たちの拒絶を解く方法はなかった。

30話〜40話《人として、そして女として……》
 ジェローデルに求愛されたり、父ジャルジェ将軍が結婚話を持ち出したころから、オスカルはアンドレの想いを受け入れはしないものの、彼の一途な愛を認めるそぶりも見せるようになる。婿選びの舞踏会へ出掛ける前に、「そう簡単に私は嫁にはいかん」とアンドレを安心させるシーンも。
 しかし、パリの街は穏やかではない。テロリストが貴族を襲い、貧困で市民の心はすさんでいた。貴族社会で育ったオスカルは、衛兵隊員達と接する中で、平民への理解を深めていく。身分を越えて人と接することを学んでいったオスカルは、その過程で、アンドレに対する想いもゆっくりと変化を遂げたのであろう。
 パリへ向かう馬車が暴徒に襲われたとき、偶然助けに来たフェルゼンに向かってオスカルの口から出たのは「私のアンドレが危ないんだ!」という言葉だった。その言葉に、フェルゼンは自分が囮になってまでアンドレを救出する。自らの発した言葉に戸惑うオスカル。オスカルは、いつしかフェルゼンへの愛と決別し、アンドレの愛を受け入れている自分を自覚するのだった。
 新しい時代の足音は、革命へと動いていた。王侯貴族の平民への仕打ちに、オスカルの心はいやおうなく王室から離れてゆく。三部会での平民議員に対する王室の対応に、オスカルはとうとう命令違反を犯した。反逆罪に問われたオスカルを自らの手にかけようとしたジャルジェ将軍を、アンドレが止める。アンドレはオスカルを殺すならジャルジェ将軍を討ち、オスカルを連れて逃げると言い放つ。アンドレの想いを身分違いだと責めるジャルジェ将軍。その時アンドレは胸を張って言う。「人を愛するのに他人の許可がいるか!」。 この事件以降、オスカルははっきりと民衆の側に立つことになる。一人の人間としてオスカルを愛したアンドレへの愛情と、不当な支配に立ち上がった民衆への同調は、オスカルの心の中で同一線上に描かれている。
 男として育てられ、壮絶な人生をまっとうしたオスカルは、それでも死の間際、アンドレのことを考えて幸せそうにほほ笑んだ。貴族や平民といった垣根を取り払い、そばにいる人を愛し、正しい道を進む。その人生に悔いはなかったのだろう。


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