昔、神社の井戸に落としてしまった花櫛が、ずっと気になっていた。 その花櫛を拾ってきて欲しいと私立探偵のジョージに依頼し、何十年も経ってやっとおばあちゃんのもとに戻ってきた。きっと、おばあちゃんにとってすごく大切な物だったのだろう。
島崎藤村の『初恋』を読んで、昔を思い出した三十郎は、あの子に出会った神社へ行ってみた。神社は数十年経った今もあまり変わっていないようだった。裏手にある井戸にも行ってみるが今はもう使われていない。「あの子の屋敷は、この近くだったはず…。」
三十郎はお屋敷を探した。引き寄せられるように辿り着いた家。そして昔の記憶がよみがえる。縁側に座っているおばあちゃんの髪に、あの花櫛がさしてあるのに気づく。そして、涙を見せ去っていく三十郎でした。 おばあちゃんが、桜の木の向こうにいる人に気づく。だんだんと小さくなっていくあの人を見つめていた。おばあちゃんは、この花櫛がもう一度、昔のあの人に遭わせてくれたのだと信じていた。