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大悟は大切にしまっておいたラケットを取りだし、少しだけ人間味を取り戻してきたひろみに渡そうとしていた。そのラケットは『宗方仁』の名前が刻まれている、宗方の形見。しかし、ひろみはそのラケットを受け取ることを拒否。テニスも、宗方のラケットも今のひろみには重すぎるようだった。
大悟に促がされトレーニングに出かけるひろみだが、少しのランニングがきついほど体力は低下していた。
一方、宗方の死のショックから立ち直れない蘭子は、宗方が好きだった日本海へと旅に出た。そして、バイクで海岸沿いを走っていた蘭子は事故にあってしまう。
事故の知らせを受け、大悟と病院に駆けつけたひろみ。マキ、藤堂、麗香、尾崎ともにひろみの普通ではないやつれた様子に驚きを隠せなかった。食事もまともに口にしていなかったひろみは、拒食症になっており、マキが手渡したドリンクまでもうけつけないほどだった。
やっと手術室からでてきた蘭子は、「ラケット、私のラケット…」とうわ言で言っていた。無意識のうち、蘭子はラケットを握り、テニスをしたがっていたのだ。
翌朝、藤堂から蘭子の容態が安定したと連絡が入る。そして、再び宗方のラケットを見せられたひろみは逃げ出したものの、心のどこかでテニスをやりたいという気持ちが溢れているようだった。
大悟はひろみに「5年経った今でも自分は慟哭の中にいる…」そして、「宗方の死を忘れようとせず、目の前に置け。」と語る。大悟の気持ち、ひろみ自身の進むべき道に気づいたひろみは、宗方のラケットを手にし復活のサーブを打ちこんだ。 |
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蘭子を見舞いに病院へきた麗香は、集中治療室に運ばれる時のことを話した。「無意識だからこそ、蘭子の心がテニスを求めている。」と麗香は蘭子に言う。
ひろみと大悟は、お寺の近くにある荒れ果てたテニスコートを使えるように手入れし、久しぶりに練習を再開したのだが、体が鈍っていて思うように動けない。しかし、ひろみの様子を見に来た千葉は、テニスの練習を始めたひろみを見て少し安心していた。
そして、大悟はひろみを選手として心も体も一回り大きくして見せると宗方に誓い、大悟は一週間後にひろみの練習試合を組んだ。相手は西高テニス部の1年生男子。しかし、中学2年でジュニア部門のタイトルをとった実力のある選手。ブランクのあるひろみが対戦するには、かなり厳しいと思われる。
蘭子は度々見舞いに来る麗香に「もう一度コートに立ってほしいだけ…。」だと言われ、「もう会いたくない。帰って!」と大声を上げるが、蘭子の元から転げ落ちたのはテニスボールだったのだ。
大悟はひろみに「パワーテニスを見せてやる」と、サーブレシーブの特訓をする。大悟のサーブをリターンエースできるのは宗方だけと言うほどの凄いパワーだ。もちろん、今のひろみにそんなパワーのあるサーブを返すことなどできる訳がなかった。
練習試合当日、ひろみは初心者に戻ったようになかなか手が出せない。ラブゲームに悔しさを隠し切れないひろみの動きは変わった。しかしコンディションの悪いひろみは、結局ワンポイントもとれずに負けてしまった。麗香から、ひろみが練習試合でテニスコートに立つと聞かされていた蘭子は、試合を見に…。そして、「わたしも早く足を直さなくちゃ。」と麗香に話す蘭子は、暗闇から抜け出せたかのようだった。 |
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練習試合を終え自宅に戻ったひろみは、卒業式を迎えることになった。今年から大学生になるひろみはジュニアではなくなり、女子テニス界へ仲間入りする。日本庭球協会の理事会では、大悟がひろみの専属コーチとして正式に任命された。そして、6月に行なわれる全日本オープンの日程が決まり、ひろみは大学のテニス部ではなくパークヒルテニスクラブに入るよう、大悟から指示を受けた。
マキとふたり、中華食べ放題とゲーセン遊びまくりの卒業パーティーを楽しんでいたひろみが、突然泣き崩れてしまったのだ。そして、大悟を尋ねたひろみは、全日本オープンのエントリーをやめたいと言い出した。理由を尋ねる大悟に「時間がほしい。」と答えるひろみだった。
大悟は、ひろみの全日本オープン欠場の可能性を竜崎理事に伝える。既に全日本オープンには、麗香だけでなく蘭子も正式にエントリーしている。ひろみが欠場すれば、残念に思う人が多くいるのだ。
蘭子に申し込まれた練習試合を一度は断った麗香だが、完全な練習試合として受けることにした。タイブレークなしのスリーセットマッチで、ひろみが審判をすることになった。しかし、練習試合とは思えない二人の真剣な勝負。麗香はひろみに見せるため、入院で体力のなくなっている蘭子にまったく手を抜かなかったのだ。 |
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心の中にある黒い穴と、逃げずに闘う事を決めたひろみは、全日本オープンにエントリーした。
麗香との練習試合でブランクを実感した蘭子は、トレーニングのため単独でオーストラリアに渡ることに…。しかし、誰にも言わず出発しようと、空港で搭乗を待つ蘭子の前に麗香が現れた。協会にオーストラリア行きの届出をだした蘭子のことを、麗香は理事長の父から聞いていたのだ。蘭子は、6月の全日本オープンまでの2ヶ月間、オーストラリアで特訓をしてくるらしい。
ひろみも全日本オープンに向け、ハードなトレーニングを開始した。藤堂と打ち合うひろみは体力、気力ともに調子を上げてきた。
蘭子もオーストラリアでがんばっているらしく、弾丸サーブにも磨きがかかってきたと麗香に便りが届いた。一方、麗香も苦しい特訓を自らに課していた。練習でへとへとになり戻ったロッカールームでひろみが見たのは、麗香の鉛を着けたラケットと、体のあちこちについたあざ。「このあざは、ひろみと蘭子へのわたしの礼儀。やるべきことは全部やってコートに立つ…。」この麗香の言動が、ひろみのテニスを狩り立てた。トレーニングを終え帰途についた大悟を追い、サーブを受けさせてほしいとお願いする。しかし、ひろみは気迫で打ち返そうとするがなかなかボールは返せない。大悟に「体ごと心ごと打ち返せ。」と言われ、麗香の言葉を思い出し、宗方コーチを思い、気持ちのすべてをぶつけ打ち返したボールは、大悟がいるコートの深いところへ飛んでいった。 |
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全日本オープンの組合せが決まった。ひろみの初戦の相手はなんと緑川蘭子。その勝者が2回戦で竜崎麗香と対戦することになったのだ。
全日本オープンを目前に、蘭子がオーストラリアから帰国。麗香の家を訪ねた蘭子がお土産といって麗香に渡したものは、オーストラリアで練習に使っていたテニスボールだった。そして、蘭子は「ひろみにもそのボールのこと教えてあげて。」と麗香に言い帰っていった。
大悟は麗香に託り、ひろみに蘭子がオーストラリアで使っていたテニスボールを渡す。そのボールの重さは、普通のボールの約3倍。自在に打てるようになっていれば、蘭子のサーブはかなりパワーアップしているはず。
雨で練習が中止になり休養するひろみだが、ボールのことが気になりどしゃ降りの中、蘭子の渡したボールで壁うちを始める。
試合当日は晴天、蘭子のサーブで試合は始まった。蘭子の弾丸サーブのパワーは想像以上、全く返すことができない。蘭子のサーブを返せないひろみは、自分のサービスゲームをすべてとらなければタイブレイクにさえもち込めないのだ。もちろん蘭子に勝つためには、弾丸サーブを破らなければならない。そして、蘭子のサーブを破る前に、ひろみは自分のサービスゲームを落としてしまったのだ。 |
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蘭子とひろみの試合、第1セットは6−2で蘭子に軍配が上がった。蘭子のサービスエースは連続16本。少しずつタイミングが合ってきてはいるものの、第2セットに入っても、ひろみは蘭子のサーブを全く返すことができない。蘭子があと1点奪取すれば、ゲームセットになるところまで試合は運んでいる。その時、ラケットを握る蘭子の右手に痛みがはしった。少しパワーの落ちたサーブをはじめて打ち返すひろみだが、結果はラインを少し割りアウト。あとワンポイントとられれば、ゲームセットになってしまうのだ。勝利をかけ、サーブトスを上げる蘭子の右手首に激痛が…。蘭子の試合続行は不能、棄権となってしまった。2回戦進出が決まったひろみの心中は複雑だった。それも、ひろみ同様やっと暗闇から抜け出し、テニスに打ちこみ始めた蘭子が再起不能になってしまったらと、蘭子のことが気掛かりだったのだ。
ひろみが大悟を訪ねると、そこには蘭子がいた。蘭子は、もうテニスをするのは無理だと医師に診断されたと言う。大きなショックを受けたひろみに、蘭子はまだ左手がある、テニスをやめないと、サウスポーとして再出発する事を告げた。
2回戦、ひろみと麗香の試合が始まった。2人とも全力を出しきり、激しい戦いとなっている。試合中盤になり天候が崩れ、雨が降り出した。そして、次第に雨風ともに激しくなってきた。試合をサスペンデッドゲームとして、明日以降に持ち越しにするよう審判より提案があった。しかし、麗香もひろみも続行を希望。2人はこの試合、どこかで宗方が見ていてくれると信じて…。 |
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